イジワルなカレの愛情表現
その日は家に帰ってからも、ずっとドキドキしっぱなしだった。

昨夜もほとんど眠れなかったというのに、目が冴えてしまい眠れなかった。


布団の中で硬く瞼を閉じていると、どうしても思い浮かんでしまうのは、資料室での情事。

永瀬さんと交わしたキスが、今でも鮮明に思い出せてしまい心が震えた。


永瀬さんの真意は計り知れないし、なにより自分の気持ちが一番信じられなかった。


彼のことなんて好きじゃないと思っていたのに、キスひとつで簡単に気持ちを揺るがされてしまったのだから。


「もう……これからどんな顔をして会えばいいのよ」


同じ会社に勤めているのだもの。部署が違っても会う機会はある。

ましてや今、永瀬さんの記事を担当しちゃっているのだから。


頭まですっぽり布団を被り、必死に忘れようとしながら眠りに就いた。



今度会ったらどんな顔をすればいいのだろう。グルグルとそのことばかり考えていた私の前に、永瀬さんは次の日、なんてことない顔をして現れ、こっちの都合も聞かずに食事に誘ってきた。


それも仕事を終え、オフィスを後にしエントランスを抜けたところでだ。
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