イジワルなカレの愛情表現
つい視線は永瀬さんの唇へと向かってしまう。


ほどよい厚みに、形の良い唇――。


そういえば化粧室でメイク直ししていた時、他の課の子達が騒いでいたっけ。


『永瀬さんの唇ってセクシーだよね』って。


あの時は聞き流しながらも、なんて話を会社でしているのだろうと他人事のように思っていたけど、あの人たちが騒ぎたくなる気持ち、今なら分かる。

確かに永瀬さんの唇は魅力的だと思う。それにキスだって――……。


一瞬にして昨夜のキスを思い出してしまい、かぁっと顔が熱くなっていく。


なんで今! 思い出しちゃうのよ!! 目の前に永瀬さんがいるっていうのに!


必死に頭の中から邪念を振り払おうと躍起になっていると、前からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

顔を上げれば、永瀬さんが我慢できなくなったように笑っている。


「なぁ、お前の考えていること、手に取るように分かるんだけど、どうしたらいい?」


イジワルな顔をして問いかけてきた彼に、ますます私の顔は熱くなるばかり。


「そんなの、知りません」


誤魔化すように黙々と料理を口に運び、シラを切ることしかできない。


すると彼は唇の端を上げ、頬杖をついて私を見つめてきた。
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