イジワルなカレの愛情表現
気づけばメニュー表を持つ手が震えてしまっていた。

けれど、それもそのはず。
隣の席にいるのは、永瀬さんと山田さんで間違いないのだから。


しかも会話の内容からして、ふたりっきりで来たんだよね?
同期同士だし、ふたりで呑みに来ても不思議ではないと思う。けれど――……。


思い出すのは、先日の出来事。

山口室長と途中から一緒になり、会社に向かった先で山田さんに会った日のことだった。


あの日、振り返った時見て感じてしまった。

山田さんが私を見る目に、敵意があることを。それはきっと永瀬さんのことが関係しているんじゃないかって、なんとなく予想していたけど……。


その予想は見事的中したってこと? でも本当にただの同期で仲が良いだけかもしれない。


ふたりで呑みに来たからって、特別な関係だったり、感情を持っていたりするとは限らないよね?


必死にそう自分に言い聞かせながらも、このまま隣にいられるわけがない。

陽菜が戻ってきて話をきていたら、確実に私がいるってバレてしまうだろうし。


幸いなことに陽菜は今、電話で席を外している。
彼女の分の荷物も持って、ここを離れないと。
< 99 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop