メロウ
夜色の静寂の中、私は脇に置いていた紙袋を持ち、ふらりと立ち上がって、照明のスイッチを入れた。

ぱっと点灯した蛍光灯のそらぞらしい明るさが、空虚な部屋を照らし出す。


紙袋を手にしたまま、キッチンに入る。

調理台に置くと、かさりと乾いた音がした。


しゃがみこみ、シンク下の収納から手鍋とボウルを取り出す。


手鍋に水をはり、火にかけて沸騰させる。

ぐつぐつと煮たってきたところで火を消し、水を足して適温にする。


そこにボウルをいれ、私は紙袋の中に手をつっこんだ。

がさごそと手探りをしていると、平べったく硬いものに手が触れたので、つかんで取り出す。


銀色の包み紙をぺりりと剥がすと、深いブラウンが姿を現した。


手づかみにして、適当な大きさに割り、ボウルの中に入れていく。


指に触れた部分がゆるりと溶けて、私の肌は温かいのだと知る。

甘い香りが微かに漂った。


最後のひとかけらを、気まぐれに口に含む。


濃厚な風味が口の中に広がった。


チョコレートってこんなに甘かったっけ、と独りごちながら、ゴムベラを手に取る。







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