焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「……俺、智美に甘えてる」


口に出してみると、嫌でも自分の非を認めざるを得ない。


そうだ。俺は智美に甘え切っている。
付き合って六年。同棲して三年。
一緒に暮らすと決めた時、もちろん家事の分担のことも話をした。


俺も智美も普通に正社員として働く社会人だから、料理も洗濯も掃除も基本的には交替制。
もちろんお互いの仕事の繁忙期などはそのルールも曖昧になってきたりはするけれど、この半年、俺は智美に任せっきりになっていた。


週末、掃除も洗濯もやらなきゃいけないとわかっていても、残業続きの仕事疲れからつい寝過ごしがちになった。
同じ社内にいる智美は俺が参画するプロジェクトのことを知っているから、何も言わずに俺の代わりにやってくれた。
気が付いたら、いつの間にかそれが当たり前になっていて、智美にやらせっ放しだった。


この半年で些細な喧嘩が増えた。
堪忍袋の緒が切れる度に智美は部屋を出て行って、冷却期間を置いた後で俺が迎えに行って仲直り。
繰り返しちゃいけないことだったのに、あまりに何度も繰り返したせいで、こんな喧嘩も日常茶飯事になってしまっていた。


昨夜、智美に『別れよう』と言われて焦った。
『別れたくない』と言っても智美の心を動かすことが出来ず、初めて真剣に考えて気付いた始末だ。
どこまでも自分が情けない。
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