焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「……そうだよな……。智美は俺の母親でも妻でも家政婦でもないんだから……。怒って当然だよな」


頭を抱え込んで溜め息をついた時、俺と千川の前に中ジョッキが置かれた。


「なのに俺、カレーが続いたくらいでイライラして……」


隣で千川が吹き出す声が聞こえた。
ジロッとそっちに目を向けると、千川が飲み下したビールに軽く噎せていた。


「お前ら、マジ、くだらないことで喧嘩してんな~」


ゴホゴホと咳き込む千川にムッとしながら、俺も深い溜め息をついた。


「……ほんとだよな」


今週月曜から遅くに帰宅した俺に出され続けたカレー。
一緒に暮らし始めた頃は、手は込んでなくても毎日同じ料理を出されることはなかった。


さすがに昨夜は、見た瞬間、どれだけ手え抜いてるんだよ!?とマジでイラッとするくらい腹が立った。


愛情もへったくれもない。
智美のヤツ、俺のことなんだと思ってるんだよ。


そんな苛立ちを心に押し隠していたら、カレーの具材をスプーンの背で潰すという無意識の行動をとってしまっていた。


「本当は、作ってくれることに感謝しなきゃいけなかったのにな……」


ボソッと呟いた自分の言葉は、思いの外胸にグッと突き刺さった。


気付くのおせえよ、俺……。
なんでもっと早くそこを感謝出来なかったんだ。
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