焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
智美がやっと俺に視線を向けてくれているのを感じた。
俺は無意識に身を乗り出す。
けれど。


「そんなこと、もうどうでもいい。……やっぱり勇希は、何もわかってない」


がっかりしたような、呆れ果てたような、そんな声が俺の耳に届いてゆっくり顔を上げる。


「って……なんだよ、それ!」


わかってないってなんだよ。
それならちゃんと言って欲しいのに。
言わずに呆れるだけとか、なんなんだよ。


思わず俺の方も声を上げて、正面からまっすぐぶつかった智美の瞳に、一瞬ドキッとした。
俺に失望したような……他人を見るような目。
だけど、とても寂しそうで悲しそうで……。


ドクン、と鼓動がリズムを乱して騒ぎ出す。


なんでそんな目をする?
悲しいのは俺の方だ。
これだけ言葉を尽くして謝っても、智美は気持ちを変えてくれない。
今もまだ本気で俺と別れようとしている。


「本当に、思い知った。やっぱり私、このまま勇希と続けても意味がない」


そう言いながら目を伏せて、智美は俺の手を振り払った。
そしてサッと立ち上がると、俺に背を向けて寝室に入って行く。


開けっ放しのドアの向こうから、ガタガタと音が聞こえてくる。
きっと一昨日の夜と同じように、残っている荷物をカバンに詰め込んでいるんだろう。
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