焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
智美が出て行った後、俺はシャワーを浴びて、ボクサーパンツ一枚の格好でリビングの床に大の字で転がった。
網戸にして開け放った窓から、生温い風が吹き込んでくる。
せっかく汗を流した後なのに、背中にジワッと汗が伝うのを感じた。


天井を見上げたまま、胸を上下させて大きく息を吐く。
そのまま無意識に指で唇をなぞった。


久しぶりに交わした深いキスの甘さに、ドキッとしたのは俺だけか。
泣くほど嫌がるってことは、智美の方はもう俺と完全に別れたつもりでいるんだろう。


「……はああ……」


ギュッと目を閉じて、頭の下で指を組んで、枕替わりにした。


俺は、何をわかってないんだろう。


六年付き合った彼女だ。
智美のことは誰よりもわかっていると思っていた。
けれど、智美から面と向かってそう言われてしまうと、俺の独りよがりな自信も大きく揺らぐ。


「……どうでもいいってなんだよ……」


そんな言葉で一方的に終わらせられて、俺はどうしたらいいんだ。


「……ああ~……熱」


身を纏う空気は熱い。


この暑さを感じる度に、智美と付き合い始めて『○年』と意識してきた。


そうか。またこんな季節が巡って来た。
俺と智美の七年目はもう巡り来ないんだろうか。
< 35 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop