焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「おはよう、潮崎さん」

「……おはようございます」


私のすぐ横に立って普通に挨拶する勇希に、チラチラと女の子たちの視線が向くのがわかる。


「来期の予算案申請の件で、相談したいことがあるんだけど。今日どっか時間とれる?」

「えっと……」


愛想笑いを浮かべながら、私は目を泳がせてそっぽを向いた。


あんなことの後で話なんかしたくない。
なのに仕事中に仕事の話をダシにされたら、無視するわけにもいかない。


「……今日じゃなきゃダメですか?」

「今日じゃなきゃいつ?」

「え~っと……来週とか?」

「話にならない。予算案申請期限今週末だろうが」


ハッと小さく息を吐きながら、勇希が私のデスクに手を置いて重心を掛ける。
そのまま軽く身を屈めた。


「……そんなに忙しいなら、俺の方はいくらでも予定合わせますんで」

「う……」


勇希が忙しいことは重々承知している。
そこまで譲歩させるわけにはいかない。
いくらちょっと仕事が貯まったと言っても、私の方は丸一日……しかも来週まで待たせるほど時間が空かないことはないのだから。
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