焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「あ、智美、寒くないか?」


一応気遣いを向けられて、私は黙ったまま頷いて見せた。
そして、手近な椅子を引いて腰を下ろした。


「何の用?」


先手を打ってこっちから切り出すと、勇希がわずかに苦笑いした。
そして、私の隣でテーブルに軽く腰掛けた。


「今、どこに泊まってるんだ?」


その質問に、私は黙ったままで振り返りながら勇希の横顔を見上げた。
勇希は私とは逆方向に身体を向けたままで、腰の横に両手を突いて肩を竦めた。


「島田さんから聞いたよ。昨日部屋出たって?」

「情報早いね」


素っ気なくそれだけ言うと、私は目線を元に戻した。


「ビジネスホテル?」

「……そう」

「金続かないだろ? 帰って来いよ」

「今週中には部屋決めるから、大丈夫」


それを聞いて、勇希は浅い息を吐いた。


「……なあ、言ってくれなきゃわかんねえよ」


この間とは違う、冷静に私を窘めるような口調。
あれからどれだけ考えたんだろう。
結局わからなくて焦れるのを隠してる様子が、私にはよくわかる。


「家事任せっきりにしたから……ってわけじゃないんだろ? そりゃ俺、無神経なことしたのはわかってる。それに関してはマジ、何度でも謝る」


早口でもどかしそうにそう言いながら、勇希は軽く身を捩って私を見下ろした。
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