焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
そして私は、そんな自分に愕然とする。
今の私、完全に主婦でしょう……。
アラサーとは言え、未婚のOLなのに。


勇希は、どこまでもセコい私に苦笑した。


「だから、記念だって言ってるだろ? 俺が作ろうかと思ったけど、イマイチ料理は自信ないし」


そう言う勇希を、私はチラッと窺い見る。


勇希は決して料理が下手なわけじゃない。
やらせればインスタントラーメンはもちろん、パスタもカレーもシチューだって、そこそこの出来栄えで作ることは出来るのだ。
それをしなかったということは。


単に、見栄え良く品数多く豪華にしたかった。
そして本人の言う通り、プロジェクトのリサーチ、それだけの意味だ。


「……ルームシェア開始が、そんなに勇希にはおめでたいの?」


少し呆れた気分で溜め息をつきながら、私はいつもの定位置に座り込む。


「とりあえず、俺の首の皮が一枚繋がったって意味では」


そう言って自分の缶を空けると、勇希は私にも空けるように促して来た。
そんな仕草につられて、よく冷えた缶のプルトップを空ける。


「言っとくけど、私はやり直すつもりはないからね」


普通に乾杯を仕掛けてくる勇希に、私は膨れっ面になりながら念を押してそう言った。
可愛くない、と思いながらも、声が刺々しくなってしまう。
はいはい、とサラッと流す勇希に、思わずムッとした。


「智美が、俺が納得出来る理由を言ってくれれば、ちゃんと考えるよ」


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