焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
「っ……今からちゃんと考えてよっ!!」

「だって智美、ちゃんと言ってくれないじゃん。別れる別れない以前に、話し合いの姿勢、全然取ってくれない。そんなんじゃ納得出来ないだろ」


勇希の方は平然とした表情で、痛い正論を突いてくる。
テーブルの端に置いてあったお惣菜屋さんでもらった割り箸を手渡されて、私は一瞬言葉に詰まった。


「……もう好きじゃないって言ったら、納得するの?」


勇希のペースに飲み込まれているこの状況がとても悔しくて、私はぶっきら棒に呟いた。
缶に口を付けながら、勇希が私を上目遣いに見つめてくる。


「ああ……だから、『意味がない』ってこと?」

「……そう」


胸がズキッと疼いて痛むのを感じながら、私も缶に口をつけた。
発泡酒じゃない高級で濃厚な味わいのある冷たいビールが美味しい。
こうして週末限定のこのビールを、勇希と二人、向かい合って飲むのはいつ以来だっただろう。


「……智美が本気で言ってるなら、納得しなきゃいけないんだろうけど」


わずかな間沈黙していた勇希が、テーブルに頬杖をついてボソッと呟くのが聞こえて、私もハッと我に返る。
目線を上げた先で、勇希は軽く目を伏せていた。


「信じたくないから、納得しない」


少し低い声でそう呟く勇希に、ドキッとしてしまう。
一瞬何をどう反論していいかわからなくなった私の前で、勇希は生ハムがたっぷり入ったサラダを取り皿に盛っていた。
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