焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
その日は先方との提携契約の為に訪欧していたメンバーが帰国していて、報告会と称して早めに仕事を切り上げて飲みに繰り出した。
メンバー数人で盛り上がったけど、まだ週の真ん中ということもあり羽目を外すわけには行かず、マンションに帰宅したのは午後十時半だった。


なんとなく惰性で『ただいま』と声をかける。
玄関に智美の靴はあるけれど、廊下の先のリビングは真っ暗だ。
もちろん『お帰り』という声は返って来ない。


ふうっと息をつきながら、まずキッチンで水を飲んだ。
口元を拭ってから、静まり返っているリビングに足を踏み入れる。
フッと顔を向けると、寝室のドアの隙間からは明かりが細く漏れていた。
ドアの向こうで、智美の気配を感じる。


俺はカバンを床にドサッと置いて、リビングの電気を点けた。
そして、テーブルからエアコンのリモコンを取り上げて操作する。


昨日も今日も、俺を迎えるのは真っ暗なリビングと熱気を帯びた温い空気。
そこで智美が寛いでいた跡はない。
智美はきっと、帰って来てからずっと寝室に籠って過ごしているんだろう。


同じ屋根の下で過ごしていても、ほとんどまともに顔を見ていない。
ルームシェアって感覚でいいと言ったのは俺だけど、これじゃ話は何も進展しない。


無意識に深い溜め息が漏れてしまう。
腕に下げていた上着を無造作に放り投げて、ネクタイをシュッと音を立てて抜き去った。
そして、重い気分を隠せないまま、俺はシャワーを浴びに浴室に向かった。
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