焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
『一緒に寝よう』
寝室を出て行く勇希の背中を見送って、私はドキドキしていた。
心臓がはちきれそうなくらいバクバク拍動して、とてもまっすぐ勇希を見上げていられなかった。


私だって、あんな角度で勇希を見上げたのは久しぶりだ。
私を見つめるちょっと情欲に満ちた瞳も、肌を滑る大きな手の温もりも、どんな最悪の喧嘩中でも勇希だけが持つ最強の武器だし、ときめいてきゅんとしてしまうのを抑えられない。


だけど……。


『結婚しよう』


普通に聞いたら嬉しいはずの言葉に素直に頷けないのは、勇希の『史上最年少課長昇進』が心に引っかかっているからだ。


社長表彰を授与する前なのに、とても名誉なことだし、すごいと思う。
この半年、勇希が頑張っていたのは知っているから、素直におめでとうって言ってあげたい。


引っかかっているのは、昼間トイレで聞いた女子社員の噂話だ。


『役付になるから、部長から結婚を急かされてるらしいよ』 


多分、かなり真実味のある噂だと思う。


結婚していた方が昇進が有利なのは、一般的に周知の事実だ。
私生活が安定するという意味でも信用されるし、きっと勇希もそれに近いことを言われているんだろう。
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