焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
今朝の勇希の寝姿を思い出してしまった。
確かなタイムラグはあるけれど、今こうして左側を向いて横になっていると、こっちに伸ばされた勇希の左腕が私の身体にかかっているような気分になってしまう。
それがリアルじゃないのに、なんだかやけに鮮明な妄想で、胸がドキドキと騒ぎ出してしまうのを自覚した。


私のバカ! 何を考えているの。
少なくとも、この二ヵ月同じベッドに眠っていても勇希とそういう触れ合いはなかった。
昨夜のあんな勇希は久しぶりで、だからこそ私は混乱した。
なのに、私は何を想像して胸を高鳴らせているんだろう。


なんだか落ち着かない気分で、ガバッと勢いよく身体を起こした。
携帯で時間を確認すると、午後十一時を回ったところだ。
ちょっと早いけど、そろそろ眠ってしまおうか。
そう決めて、一度水を飲んで来ようとベッドから降りた。


そおっと寝室のドアを開けると、いつの間にかリビングの電気は消えていた。
テーブルの上のモバイルパソコンも片付けられていて、勇希は私が帰って来た時と同じ格好で床に転がって目を閉じている。
そんな姿を見て、私はきゅっと唇を噛んだ。


「いったいどっちが蓑虫なのよ」


小さく唇の先で呟いて、静かに足を踏み出す。
一度勇希のそばで足を止めて、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
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