焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
なんて答えれば、今の私の気持ちが佳代にも上手く伝わるか。
そんなことを考えながら、私もナイフとフォークを動かした。


「……それだけじゃなくてね。このまま仲直りしただけじゃ、何も変わらないと思うんだよ」


言葉を選びながら返事をすると、佳代も、ナイフとフォークを持ったまま手を止めた。
私は、なんとなく周りのテーブルで食事を進めるサラリーマンやOLに視線を向けた。


もうすぐ七年目を迎える。
こんなくだらない喧嘩を繰り返す関係のままじゃいけない。


ある意味、せっかくこういう状況になったのだから、私と勇希のこれからをちゃんと向き合って考えるべきだ。
そう、今がまさにいいチャンスだ。


「何も変わらないなら……やっぱり今、別れた方がいいと思う」


静かに落ち着いて言う私に、佳代は目を見開いて絶句した。


「ちょっと、智美……」


私にかける言葉を探すように口を開いて軽く腰を浮かせて、


「……あ」


お店の入り口の方を見遣った佳代が、一言短く呟いた。
訝しく思いながら、視線につられるように振り返って、次の瞬間、私はテーブルに身を屈めた。
完全に隠れることは出来ないにしても、とにかく下手に目立って存在をアピールすることだけは避けたい。
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