焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
あの噂……ガチだったんだ、と変なところで納得する。
お店に入って来たのは、勇希とその直属の上司である海外営業部の部長。
そして、私は見たことのない落ち着いたイメージの美人だった。


「タイミング悪……」


佳代が溜め息をつきながら私と同じように身を屈める。
勇希たち三人は、私たちのテーブルからそれほど離れていない、パーテーションで仕切られたテーブルに案内された。


「……あのね、智美。葛西君ね、秋の人事異動での課長昇格内定したんだ。……海営の部長って古い体質の人だし、部下の縁談まとめるの趣味とか聞くし、あれも……」


身を屈めて声を潜めたまま、佳代は首だけ振り向かせて三人のテーブルを窺い見た。
ランチのオーダーをとった店員がテーブルから離れて行くと、そこに座る姿が私にも確認出来た。


勇希と部長が並んで座っている。
見知らぬ美女は、勇希の正面の席だ。


「……うん。知ってる。あれ、部長が勇希に紹介する人かな」

「え。……それ、智美も聞いてた?」


私を気遣うように小声になる佳代に、頷いて見せる。


聞いた時はモヤモヤしたけど、知っていて良かった。
おかげで、今まさにその現場に居合わせてしまったと言うのに、私は意外と冷静だった。


「すごい……頭キレそうな美人だね……」


そんな負け惜しみでしかない言葉も、無感情で口に出来た。
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