焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
お店を出てから、黙ったまま佳代と並んで歩いた。
ビルを出て外の通りに出る。
夏の熱気漂う外気に触れて初めて、佳代が元気に顔を上げた。


「あのさ。葛西君は智美に別れようって言わせたまま、終わらせるような人じゃないよ」


慰めてくれてるのか、励ましてくれてるのか。
佳代の方が必死になって、私に向かってそう言った。


「……うん」


ぎこちなく笑って、私は自分の胸に握った手を当てた。


「あのままあの人とどうこうとか、そんな無責任なことする男じゃないし……!」

「ありがとう。それはわかってる。……ううん。やっとわかった」


少しだけ泣きそうになりながら、私は足を止めて佳代と正面から向き合った。
佳代は困惑を隠せない表情で、まっすぐ私を見返してくれる。


「他の人に盗られそうになって自覚するなんて、ほんと、自分でもバカだと思う。でも……わかったよ、佳代」


笑ってるつもりなのに、頬の筋肉が引き攣る。
意識して力を入れていないと、泣いてしまいそうだ。


だけど、泣いてる場合じゃない。


「佳代、私ね。私と勇希の間に、心が失くなっていくのが、寂しかったんだと思う」


まだ心のどこかで迷いながらはっきり口にすると、私の胸には切ないくらい勇希への想いが湧き上がって来た。


ああ、そうだ。
それが答えだったんだ、と実感する。


「私は勇希が好きだから、勇希と恋したかったんだ」
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