焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
一日の仕事を終えて、ビルの通用口の片隅に佇む。
終業時間を一時間過ぎると、帰宅する社員の姿も多く見られるようになった。


通行の邪魔にならないように、エントランスからちょっと離れた場所でセキュリティ改札を気にしながら、私は一度大きく息を吐いた。


勇希とちゃんと話し合う。
言いたいこと、伝えたいことを全部ぶつけ合って。


『帰り待ってる』と送ったメールには、『ちょっと遅くなるかもしれないよ』と返事が来た。
きっと勇希は、マンションで待ってろと言いたかったのだろう。
それでも、マンションに帰ってしまったら、そこには嫌でも私と勇希のこれまでの生活空間が広がってしまう。


勇希ともう一度恋がしたい。
私の願いはそれだから、こうして外で勇希を待つだけで、やり直せるような気がした。


デートの待ち合わせ場所で、勇希の姿を探した時のドキドキとか。
今日はこれからどこに行こうか、とソワソワしたこととか。
こんな感覚をいつから失ってしまってたんだろう。


改めて、私と勇希の変わってしまった関係が寂しい。
もっと早く向き合うことが出来ていたら、こんな気持ちにならずに済んだのに。


ちょっと切ない気分になりながら、私は大きく首を横に振った。
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