先生、恋ってなんですか?
「そんなもんだよ。あの子が影で私のことなんて言ってたか知らないの?」
先生は素直に首を振る。
告げ口するようで気が引けるけれど、まぁ、事実だし。
卒業して何年もたつからもう時効だろう。
「良い子ちゃんぶりっ子の八方美人、キモい。それ言った次の瞬間に私に笑ってお菓子ありがとう~!すごいねー!なんて言うんだからきっとどこにいってもうまくやってけるよ、あの子は」
「お前それ、」
何か言いたげな先生を苦笑いで牽制する。
「たまたま教室入る前に聞こえただけ。その前に、作りすぎたお菓子渡してたの。ぶちぶち取り巻きちゃんたちに溢してたんじゃない?ストレス発散の一種でしょ。私はなにも思うところはなかったから普通に教室入って、そのあとも普通に過ごしてただけだけど」
「……そうか」
「なに?先生落ち込んでるの?」
「多少な。自分とこの生徒の人間関係見抜けないようじゃ俺もまだまだ詰めが甘いよな」
そう言って落ち込んでいる先生は初めて見る顔で、なんだか不思議。
「まぁ、しょうがないんじゃない?私はあの子のそれをなんとも思ってなかったし、あの子は先生の前で必死だったんだし。でも先生は先生でちゃんと贔屓するでもなく見てくれてたじゃん」
「何、慰めてくれてんの?ありがとう」
素直にお礼を言われるとなんかむず痒い。
「今はこっちで、それなりにちゃんとしてるし、友達ってほどでもないけど仕事仲間もいい人ばっかだし」
そんな言葉で、むず痒さをごまかした。