先生、恋ってなんですか?

私は普通のサラリーマンと専業主婦な両親のもとで生まれ育って来たわけだけれど、自分自身はこの職以外に就いたことがないから、他の職業のことはわからない。
だからどっちが大変かなんて言うつもりもないし、そもそも比べること事態間違ってると思ってる。
けれど両親は私にいつも言う。

女の幸せは結婚することだ、せめて普通のOLさんに、って。

あのちっちゃい街では女は学校を卒業したら若いうちに結婚、というのが浸透している。
地元の高校を出たら、地元の企業に就職して、地元の人と結婚する。
結婚が女のステータス。
だからこそ、先生も浅野に狙われてた、というものだ。
まかり間違っても、高校を卒業して街を離れて進学、就職なんて考えは過らないようだ。
だから私は、あそこで異端児扱いだった。



“私は、自分で自分の夢を叶えたいんです”

高校3年の時、担任……そう、目の前のこの人に言った言葉だ。
この田舎で誰かと結婚して子供を産んで、なんてことはあのときの自分は考えてもなかったし、それは今もだ。
昔と今とで変わったことがあるとするならば、両親への想いだけかもしれない。
カビの生えたような古くさい考えだと、なぜ皆がそれを受け入れているのかさえ分からない、とすべてを突っぱねて両親とも度々口論になっていたけれど。
あの人たちは、あの人たちで私を想ってくれていたのだと今はわかる。
両親は最終的に街を出ることを応援してくれたし、今だってお小言はあるけれど見守ってくれている。
だから私は、結婚だ、普通のOLに、等と言われても無下にできないのだ。
それくらいには、高校を卒業してから私も大人になった。


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