先生、恋ってなんですか?
高校までの同級生や知り合いは、会いたいとか会いたくないとか、そんな感情すらなかったけど。
「先生には夢を叶えるまで会いたくなかったなぁ」
「まぁ、そんなこと言うなよ」
ポロっとこぼれた私の本音に先生は苦笑をこぼした。
「てか先生こそ。なんでこんなとこいるの?」
「いや、まぁ、元々俺はこっちの人間だしな」
「そーなの?」
「まぁね。大学の関係で一人で向こうに住んでたんだけど、家庭の事情ってやつだ」
「ふーん」
「ちょっとね。色々とあって実家手伝いみたいなもんだよ」
「あそー」
「とにかくまぁ、久々に元気そうな顔見れて良かったよ。また行くな、店」
「えー」
「えー、とか言うなよ。傷つくだろ?」
「傷つくようなタマじゃないくせに」
「まぁね」
なんかこんな軽口久々で、楽しい。
くすくすと自然と笑いが漏れる。
なに笑ってんだ、と軽くデコピンされたから、痛むおでこを押さえて睨み付けた。
けれど、そんなのは効きもしない様子で、先生は、うーん、と伸びをして伝票を取って立ち上がった。
「ま、俺が一人で行かなくても多分また先生方に連れられていくんだろうな」
「確かに」
私は一つ頷いて、先生の後に続く。
あのメンツには見覚えがある。
年に数回はウチで宴会を開いてくれる、お得意さんだ。
きっとこれから何度も、先生とは顔を会わせることになるんだと、覚悟を決めた夜。
それは、冬の日の、夜の再会。
ちなみに。
お金を払う、払わないの押し問答は、今度お前の飯食わせろ、という先生の言葉により押しきられたのである。
私だって働いているというのに、腑に落ちない。