先生、恋ってなんですか?
あれから先生は、律儀にも私をアパートまで送ってくれた。
どうやら、意外と近所に住んでいるらしい。
街灯の少ない深夜の街をふたり並んで歩いていると、不意に先生が口を開いた。
「お前、いつもこんな時間にこんな道通って帰ってんの?」
「……まぁ」
「お前なぁ、これじゃなんかあっても文句言えないぞ?もうちょっとマシな道無いのか?」
「えー……」
「えー、じゃなくて。マジで」
「だってこっちのが近道なんだもん。別に暗いけど、崖とかじゃないし。道踏み外すこともないし」
「お前、夜道って発想はそれしかないのか?誰か襲ってきたらどうする」
「んー、まぁ誰も襲ってくるようなこと無いよ。ここら辺人通らないもん」
仮に刺されたとしても、それまでだ。
好き勝手させてもらって、私は満足してるし。
夢半ばで、ってのはやっぱりちょっと悔しいけど……。
「ま、刺されて云々ってのは流石に後味悪いかもだけど、今私が急にいなくなって困るのはその日のシフトくらいなもんで……」
「お前、バカだろ。人通りがないから助けも呼べないんだろ。大体お前の価値はお前が思ってるより軽くない」
「んー、流石に親不孝すぎるよねぇ」
「それもあるし、そうだけど。お前、女なんだから。別の意味で襲われるかもとか、怖いとかはないのか?自尊心はないのか?」
「……いやー、私が?無いでしょ!無い無い!」
あははっと笑い飛ばすけど、先生は真剣な顔で。
ちょっとふざけが過ぎたか、と反省した。