先生、恋ってなんですか?

翌日。
先生がお店に来ない時間帯に、先生の同僚と思われるあの日一緒にいたお客さんが来店した。

「いらっしゃいませ」

お席にお水やおしぼり、お通しを並べていく。
新規オーダーを頂き、その足でちゃかちゃかと仕事をこなしていく。
平日ということもあって、今日は客足がまばらだ。
その分スタッフ数はもちろん休日より少ないので、一人のこなす幅が広くなる。
オーダーの最後の品を出しにいったところで、そこのお席で捕まった。

「ねぇねぇ、向坂先生とはどういう関係なの?」

不躾な質問に少々苛立つけれども、あのやり取りを見たら自然にわくだろう疑問だ。
ただ明け透けなだけと思うことにする。

「あー……元、教え子です」

にこやかに言ってさらりとかわして持ち場に戻った。
飲み屋さんではこれくらいのスキルは必須だ。
笑顔の仮面に隠しているだけで、感情はある。
嫌なものはいや、だけれど、まぁ、これくらいなら可愛いもんだ。
明らかにセクハラだろうと言う発言もあれば、リアルにセクハラされることも無いとは言えない。
お酒の入った人ってのは、どうにも素の自分と言うのが出やすいのかもしれない。
ため息を吐きながら、カウンターの中へと戻ると、店長から容赦ない「顔、怖い」の言葉。
これには、スミマセン、としか言いようがなかった。



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