先生、恋ってなんですか?

ここ最近、目まぐるしく時間が流れている気がする。
原因はわかってる。
置き去りにしたはずの過去が、先生と再会したことによって、急に現在と距離を縮めたせいだ。
そしてまた、11時になると先生がやって来る。
同僚の先生方の姿を確認すると、会釈だけしてカウンターに腰かける。

「いつもの」

一言で行われた注文に、迷わず動く。

「いいんですか?ご一緒じゃなくて」

ビールと共に言葉を添える。

「別に。新参ものの若造の上司となんてあんまり呑みたくないだろ、あっちも」
「……先生のが上司になるの?」
「まぁね、立場だけは」
「先生、今、何やってるの?」
「両親が残してった塾の運営」

てか今さらそんな質問かよ、と先生はぼやく。

「残してった、ってご両親は?」
「……他界した。事故でな」
「ごめんなさい」
「謝るこたねぇよ」

苦笑して私を慰めるけど、その顔はよくよく見ると少し陰ってるように見える。
今までは気づかなかったけれど、学校とはまた違う慣れないことに日々疲れを重ねているんだろうかと心配になる。

「だから、ここ知れてよかった。うまい酒と飯にありつける」

そう言ってビールに口をつけた。



そして営業終了後にはやっぱり、疲れているはずなのに先生は私を送ってくれるのだ。




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