先生、恋ってなんですか?
カムバック!女子力
ピピ、ピピ、ピピ、と電子音が朝を告げる。
正確には、お昼に近いくらい、だけど。
のそのそと起き上がって、数分、頭を起動させる時間が必要だ。
今日は私、遅番。
……てことは先生、お昼食べに来る。
覚醒しきらない頭の中で献立を考えていた。
1年前、先生の境遇を聞いた日に思ったことがある。
ご両親を亡くされた気持ちも苦労も私にはわからない。
大変だったでしょうとか、辛かったでしょうとか、そう言ってしまうのは簡単だけれど。
確かにそう思うけれど、私が言ったところで重みがない。
だけど。
私がかけられる言葉は見つからないけれど、美味しいものは人を幸せにできると信じてる。
夢は“幸せを食べられるレストラン”だ。
たくさんの幸せの形があると思う。
形に残るもの、残らないもの。
涙が出るもの、笑顔が溢れるもの。
その中でも食事って、生きることに直結する幸せの形だ。
初めて台所に立って、作ったご飯。
幸せそうな両親の顔を見たときに、幸せって食べられるんだって感じた。
それが私の夢になった。
先生に作った料理の数はもう、数えきれないくらいになった。
それでも先生は、唐揚げが好きらしい。
夜はファミレスで食べるんだろうから、お昼は何にしようかな。
あ、忘れてた。
ようやく覚醒し出した頭が今日のためにと昨日買い物しておいた食材を思い出す。
するりと携帯を取り出して、慣れたように先生に連絡。
『お昼は鯖味噌です』