先生、恋ってなんですか?
むくりと起き上がり、シャッと音を鳴らせてカーテンを開ける。
窓から太陽は残念ながら見えない。
ごそごそとベッド周りを片付けて着替える。
フリース地のパジャマから灰色のスウェットに。
また色気だの女子力だの言われるかもしれないけれど……ま、いいや。
部屋着は機能性が一番だ。
ポイポイと洗濯物を洗濯機に放り込んでボタンを押す。
ついでに顔を洗って、洗面所にあったゴムで髪をひとまとめに括る。
エプロンを着けて、とりあえずは米びつからざっとお米を計量して研ぐ。
鯖味噌に付け合わせはどうしようか。
野菜が少ないから煮物でもしようか。
ほうれん草があるからおひたしにして……。
私、小嶋旭の朝は、だいたいこのようにして過ぎていく。
毎日が代わり映えがなく過ごしている、といえば、そうなのかもしれない。
たまに自分の夢がなんなのかも分からなくなるときもある。
田舎を飛び出して、前向いて歩こうにも、足元はぐらついていて。
その実“前を向いているしかない”状況なのだと知っている。
現実と言う名の足元を見てしまえば、立ち止まることしかできなくなる。
前にも後ろにも戻れなくなる。
だから私は私の信じる道を行くしかないのだ、ひたすらに。
私には私しか信じられるものはないし、頼ることも許されない。
だって私は、田舎を捨ててここに来たんだから。
と、1年前までは思っていた。