先生、恋ってなんですか?
「お前はバカだねぇ」
出てきた言葉がそれだったから、ご飯を取り上げてしまおうかと思った。
マジで。
睨んだら睨み返されたので、大人しくその目に従うことにする。
逆らっていいこと、見つからなかった。
この1年で十分に思い知った。
「ちゃんとご両親説得してこっちに来たんだから、別に捨ててきたのとは訳が違うだろ」
先生は、頂きます、と言って並べられた湯気のたつご飯に手をのばす。
私はテーブルに並ぶおかずを見て満足。
我ながら良くできた。
熱い緑茶を淹れて、先生の向かいに腰かける。
「頂きます」
私も手を合わせて、食事にありつく。
「まぁね、でも……やっぱ、親の願いを知ってるのに叶えてあげられないのは、親不孝だなぁと思うときもあるんだよ。夢のためにそうやって犠牲にしてるものも沢山在るんだって思うよ」
「お前はさぁ、バカに真面目だよな」
「先生、それ私に失礼」
「いんだよ、お前はそのままで」
「そう、かなぁ」
「そうだろ」
腑に落ちないといえば、腑に落ちない。
けど……。
1年前と変わったことがある。
「ま、先生がそうだって言ってくれるんだったらそうなのかもね。どっちにしろ、私にはこれしかないしね」
信じられるものは、私だけではなくなった。
とても強引だったけれど、人に頼ることも覚えた。
私の作った料理を、全て食べてくれて美味しいのか、何が足りないのかを教えてくれるから、夢と現実の境界線を緩まった。