先生、恋ってなんですか?
食後のコーヒーを飲み、少しくつろぐ。
今日はちょっとゆっくりできる。
次の休みには何をしようか。
溜まっている家事だなんだを片付けなくちゃ。
でも久々にお菓子も作りたいかも。
思考回路は常にそんな感じで、こうやって過ごせる日がありがたく感じる。
おばあちゃんかよ、って突っ込みたくなるけど、それだけ歳を取ったってことだろう。
時刻は2時半。
ちょうど【888】のランチ営業が終了する時間だ。
今日の入りはどうだったろう?
平日だし、サラリーマンの皆さんで込み合っただろうか。
いや、お給料日前だから、逆に主婦の皆さんが来てくれただろうか。
居酒屋と言えど、お値打ちなランチ営業をするお店は少なくない。
【888】もその一つで、私も知ったきっかけはランチだったのだ。
短大進学と共にこっちに出てきた私が、安くて美味しいランチを求めてたどり着いたのが、ここだったのだ。
田舎を出ていく私に両親は、調理専門学校ではなく、短大という選択を求めた。
専門学校にしてしまえば、逃げ道はなく、そのまま突っ走るしかないだろう。
短大ならば、2年の猶予がある。
戻りたくなったら、戻れる。
私が目指した夢がどこまで本気かを見極めるための、両親なりの決断だったのだろう。
両親には「意地ではなく、本当に自分がしたいことなのか。卒業までに心を見つめ直しなさい」と、言われた。
私の気持ちはこっちに来てからも変わることなく、それでも、思い描いたようにはならない現実に打ちのめされそうになっていた。
けれど、そんなときにいつも来ていた【888】でバイト募集している、と店長から聞いたのがそもそもの就職に至るまでの経緯だった。