先生、恋ってなんですか?
居酒屋【888】の1日は、長い。
午前11時~午後2時半、ランチ営業。
中休憩を経て、午後5時半~深夜1時が夜の営業となる。
早番ならば午前10時半から始業、開店準備と仕込み、ランチ営業をこなし中休憩をはさんで5時半~11時半までぶっ通しで働く。
もちろん、閑散期にはもっと早く上がれることも多いけれど、客商売故にそこは読みきれない。
遅番ならば午後6時から始業、閉店作業終了までの時間。
大まかな流れは変わらないけれど、バイトさんやパートさんがいてくれるので、半休をもらうこともある。
不定休だから、完全なお休みは月に4日、まばらにあるくらいで、でも1日ずっと、というのが固まらないように配慮されているのだ。
コン、とテーブルにカップを置く。
先生はごそごそとポケットから500円を取り出してそれをテーブルに置く。
送ってくれるお礼だから必要ないと言っているけれど、それは譲れないらしい。
確かに食事1回で500円というのは外で食べることを思えば安い……か。
はじめの頃の、要らない、貰え、の攻防を思い返す。
最終的に折れたのは私の方で、結局今では大人しく貰うことにしている。
使ったことは、1度もないけれど。
「ごちそーさん。じゃ、またな」
そう言って、先生は帰っていく。
いつもの時間、2時45分。
これから先生も、仕事の時間だ。
長期休暇はさておき、学校を終えてからが塾の本番の時間ということもあって、案外、先生も夜型の生活なんだそうだ。
塾の開いてない時間は、資料まとめやらプリント宿題作りに採点、生徒たちの学校の進行状況や進学先の傾向と対策を打ち出したりと、意外とやることも多いらしい。
目に見えるものが全てではない、というのは、やっぱりどんな職業でも同じことらしい。
「さて、私も頑張らないとね」
グッと伸びをして、やるべきことに手を付けた。