先生、恋ってなんですか?
閉め作業と夜分の仕込みを終わらせて、お先に失礼しまーす、お疲れさまでーす、と店を後にする。
今日は月が高いなぁなんて思いながらマフラーに顔を埋めて歩き出す。
少し歩くと、先生がファミレスの前で待っていた。
「今日は早いのな」
「あぁ……ちょっと面倒なことになってたから。ちょっぱやで仕事終わらせてきた」
にやっと笑うと先生は不思議そうな顔をして、それでもなにも言わず、歩き出した。
それにつられるように、並んで歩く。
「下野さんが先生に会いたがってたよ。私を送るの送らないのってのは置いといて、普通に飲みに来たいときは飲みにこればいいんじゃない?下野さんなら大体9時半にはお店来てるんだし」
「……まぁ、考えとく。っても、別に俺は下野さんに会いたい訳じゃあないんだけどな」
「だと思った。でも下野さんかわいそー。あ、そうそう。先生がさ、こうやって送ってくれるじゃん?だから店長に付き合ってるのかって疑われちゃってさ。先生の心配性は周りに誤解を招くよ」
先生彼女居ないの?と言えば、先生は複雑そうな顔で私を見る。
えー、彼女ネタは禁句?
「なに先生、彼女に内緒で私のこといつも送ってくれてたの?それは彼女に悪いからもう送ってくれなくてもいいよ」
「違うよ、バカ」
「バカとは失礼な!じゃあなに?束縛がきつくて逃げ出したいとか?そういう身勝手には私は付き合いきれないよー」
「だから、違うって。……今は彼女も居ないよ」
先生の答えに、複雑な顔の意味を悟った気がする。
そっか、先生……
「イイ歳の先生に、微妙なこと聞いちゃったね。ごめん」
そうか、絶賛、彼女募集中の婚活中なのかな。
悪いことを聞いたと思って、素直に謝った。