先生、恋ってなんですか?

ハンカチを受け取って、髪の水滴だけ拭き取らせてもらった。
季節はめぐって、もう今はマフラーも要らないけれど、さすがに雨が降ると寒いなぁ。
薄い春用のストールが濡れてぺしゃんこだ。
身を寄せあって傘の中に収まるように縮こまる。
肩が、先生に触れる。
服越しに暖かさが伝わるみたいだ。
なんか照れ臭い。





……という情緒はなくて、濡れた肩が当たらないように、そっと距離をとる。
けれど、それに気づいた先生が傘を傾けるからグイグイと攻防を繰り広げるけれど。

「気にすんな、今更。つか、結局そうなるならどっちにしろ、俺濡れるから。おら、大人しくこっちこい」

言いくるめられて、やっぱり最終的に私は先生の言うことを聞くはめになるのだ。
しかも逃げないようにガッチリ肩をガードされてしまった。
いわゆる、肩を抱き寄せられている状態、だ。

なんというか……。
自己管理できてない自分が申し訳ないような、情けないような。
女だからどうこう以前の問題で、むしろ人として、か。
だってそんな虚弱体質じゃないし、雨に多少当たったところで家ですぐにお風呂はいれば風邪引かないし!
てゆうか、ちょっといけばコンビニあるし、て思ってたんだけど。
……でも、自分のものとは違う体温が、不思議だ。

結局、そのまま肩を抱かれて家まで送ってもらう。
そしていつものように、じゃーな、と言って帰ろうとする先生を慌てて引き留めた。



< 36 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop