先生、恋ってなんですか?
今朝送った『今日は、筍とフキの煮物と、ひじきの煮付けときんぴらごぼうです』というメールの返事は『今日は飯要らない』だった。
……なんだろう。
たまにはご飯が必要ない日ももちろんあって、いたって普通のこと。
なんだけど、なんか腑に落ちないっていうか。
昨日の今日だから、なんか、なんかね。
肉も魚もないからか?
そんなわけない、と自分ツッコミ。
分からない。
昨日からわからないことばかりだ。
疑問は私の中に積もり、消化されることはなく。
とりあえず、すぐそこにいる“男性”の店長に聞いてみることにした。
何となく直接先生に聞くのは憚られるような気がして。
「……店長。俺も男だ、ってどういう意味なんでしょう?」
「あ?」
「なんでまた、分かりきったことを確認するんだか全く謎です」
そして昨日のことを、かいつまんで話してみた。
話を聞き終えた店長は「またなんでよりによって俺に……」とため息を吐く。
すみませんね、友達いなくて。
「それはさぁ、お前。前から俺も注意しようと思ってたけど。まずお前は女で、俺は男だ」
「いや、だから。わかりきってます、それは。だからこその疑問で……」
「いや、わかってねぇよ」
「っ!」
ぐぃ、とスプーンを持っていた手を引かれる。
弾みで手からスプーンが落ちて、派手に音が鳴った。
……このシチュエーションはどこかであった?
相手は違う人だけれど。
デジャブ?
「油断かましてると、いつか狼に牙剥かれるかも知れねぇっていってんだ」
真剣な顔をして店長は言うけれど。
「……だって、ウチのスタッフですよ?」
「だからなんだ。男は男だし、女は女だろ」
「仕事仲間、ですよ?」
「お前は人の事を信じすぎだし、危機感がない」
とは言われても。
信頼関係がなかったら仕事なんてできないじゃないか。
「少なくとも俺は、お前のハダカを他の野郎には見せたくねぇな」
言われたのが早かったのか、手を引かれたのが早かったのかは分からない。
けれど、気がついたら、店長の手が私の背中にあって。
私の目の前には、店長の肩があった。