先生、恋ってなんですか?
「……店長、悪ふざけが過ぎます」
「ふざけてねぇよ」
「なんですか、一体」
これはいわゆる、抱きしめられている状態、か。
こんな状態になっても、店長の繰り広げる冗談にはついていけないと、頭はどこか冷静で。
あ、食べかけのオムライスが冷める、なんて場違いなことを考える。
「お前の鈍感もここまで来れば天晴れだよ」
その一言で、ようやく、どうやらマズイ状況なのかもしれない、なんて気づく。
ぎゅ、と両手で抱き締め直されてゼロだった距離がもっと近くなる。
なんか、流石に、これは。
「好きだ」
自惚れじゃなければ、私、今、告白されてる状況?
まさか!自分が?
人が恋愛に浮き沈みしているのをただ見ていた、自分が?
恋する女の子はかわいいな、男性諸君頑張れよ、って傍観していた自分が?
まさか、その渦中にいるなんて。
そんな、そんなことって……!
「っ、じょ、冗談。ですよね?店長……」
それは思っていた以上に店長にダメージを与えてしまったらしく。
もう何度目にもなるため息。
そしてようやく離された体。
店長は頭を抱えている。
「冗談で言えるか、バカ」
あ、なんか、ようやく自覚したかも。
心臓の動きが、やたら早い。
「とりあえず、早く食っちまえ」
そう言って、食事を再開した。