先生、恋ってなんですか?

無言なのが、気まずい。
そもそもきっかけは私の疑問だったはずだけど、もうそんなの、今の衝撃でどこかに吹き飛ばされた。

食器を下げて、食洗機にかけて戻ると、お茶を淹れ直してくれていた。

「その様子だと、真面目に受け取ってはくれた?」
「そ、ですね。冗談ではない、と」
「冗談なんかで言えるか、タコ」

タコはひどくないか?
あれ、私この人から告白されたよね?

「俺がお前に告るってのは案外、あちこちに気ぃ使うんだよ」
「そうですか?」
「そうだろ?まず年齢」
「え、店長いくつでしたっけ?」
「34。今年で35だな。お前、25だろ?」
「そうですね」

あぁ、でも先生よりは若いんだ。

「年齢差10コってのはお前、ちょっと、勇気要るぞ?」
「そんなもんですか?」
「そうだろ」

そう、か。
そうなんだ。

「あとはまぁ、他のスタッフとの扱いに差がでないようにしないといけねぇし」
「それは、まぁ。そうですね」
「スタッフもやりづらいだろ。それに、だ。最大の壁はお前だよ、お前」
「はぁ、私?」
「そーだろよ。誰が好き好んで、自分のこと全見てねぇ奴に告白するんだ」

うぅん?見てもらうためにする告白もあると思うけど……

「俺は分かりやすくちょっかいだしてたと思うんだけどね。それに全く気づきもしねぇでいる奴に言うとなるとな」
「それは……気づきもしませんで、スミマセン?」
「社員で一番古株のお前と俺の関係がギクシャクしたりでもしろ?他のはやりにくいだろうよ」
「ごもっともです」
「俺はお前のことが好きだけど、この店の店主でもあるからな。色々考えんだよ」

ガシガシと頭をかいているけれど……それは、多分、照れ隠しだ。



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