先生、恋ってなんですか?

35歳の男性も、案外、可愛いところがあるじゃないか。
なんてのんきに、自分のことなのに、自分のことじゃないような感覚で。
ふふふ、と笑いが込み上げてくる。

するとどうだろうか。
こともあろうに、店長は私を小突く。
今しがた告白されたと思うんだけど、あれは夢かな。
だとしたらとんでもなく恥ずかしい夢だよ。
でも、ジンと痛む頭が、これは現実だと教えてくれるわけで。
……私の周りの男性は、どうも暴力的でいけない。

「お前今、安心しきってるだろう。そう言うのが、男として見てないっていってんだ」

う、うぅん。
確かにそうかもしれない。

「私……。そういうカテゴリーで見たこと、ないんですよね。仕事枠は仕事枠って言うか、仕事仲間以外に思えない」
「知ってるよ。でもとりあえず、形から入らねぇか?ここじゃなくて、別のとこで会おう。出掛けんぞ」
「えぇ、と。そこに私の意思は入らない?」
「なんだよ、嫌なのか?」
「や、そういうことでは無いんですが」
「なら良いだろ。お前、明日の休み何すんの?予定ある?」
「予定は無いですけど……」
「じゃ、そのまま空けとけ。この話は一旦おしまい、ほれ、休憩なくなるぞ」

しっしっと、店長は私を追いたててバックヤードに下がっていく。
取り残された私は呆然。

やたら強引に出かける話がまとまったけれど。
……私の意思は丸無視だ、なぁ。



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