先生、恋ってなんですか?

「いらっしゃいませー」
「ご注文は……」
「オーダー入ります」

頭の中はまとまらないながらも仕事は仕事できちんとできるんだから、不思議だ。
ピークが過ぎると、少しだけ落ち着いた時間がやって来る。
あちこちで楽しそうな声が聞こえる。
春は宴会シーズン。
送別会に歓迎会、それ以外にも何だかんだ名目をつけて集まりたくなる季節でもあるのかなぁ。
春は人を陽気にさせると思う。
キッチンで下を向いて作業をしていると、つつつ、とバイト君が寄ってきた。

「小嶋さん、なんかありました?……店長と」
「なんで?」

あまりに唐突で、思わず聞き返す。

「いや、小嶋さんはいつも通りっちゃいつも通りなんですけど。さっき店長の顔がいつになく厳つくて。でもなんというか……今は上機嫌に下野さんと笑ってるし」

首をかしげながらそんなことを言うもんだから、ぷ、と笑いが込み上げてくる。

「いやぁ、ちょっとね」

曖昧に濁してみるけれど、バイト君はキラキラな瞳で私を見る。
なんだなんだ?

「え、とうとう告ったんですか?もしかして」

嬉々として尋ねてくる。
おーい、店長。バレバレじゃないか。
なんて頭のなかで呆れてみる。
バイト君は私の返事など待たず、自分で結論を出してにやにや笑ってる。

「チャレンジャーだなぁ」
「どういう意味だい?」
「え?OKしたんですか?」
「や、してない」
「ですよね。だって小嶋さんはあの先生のことが好きなんでしょ?」

バイト君の爆弾発言に私は口を閉ざした。
誰が、誰を好きだ、と?



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