先生、恋ってなんですか?

車に乗せてもらって向かったのは大型ショッピングモールに併設されていた映画館だった。
平日なのでそんなに混んでない。
事前に上映スケジュールをチェックしていたのか、店長は迷いなく受付へと進んでいく。
これまた私の意思はガン無視か?

「小嶋!どこの席が良い?」

すでに、なんの映画を見るのかも決定していて席を選ぶたけという。
そこは私の意見が入るの?
優しいのか、なんなのか。

「や、んー、見やすいとこだったらどこでも良いかなぁ」
「そ?じゃ、ここで」

受付のお姉さんとやり取りをしてチケットを受けとる。
どうやら最近話題のアクション映画のようだった。

「あ、店長お金」
「おー。デートで女に払わせる?んなことするわけないだろ?そりゃ無粋ってもんだ。大人しく払われとけ」
「……そういうもの?」
「そういうもんだ」

言い切られてはなにも言えない、けど。
どうにも人に奢られるっていうのは居心地が悪い。

「ところで小嶋」
「なんですか?」
「こういう場で“店長”は無いな」
「え、でも店長は店長……」
「却下」
「じゃあなんと……?」
「章義。俺の名前、忘れたとは言わせん」
「えー、それはどうだろう?仮にも雇い主を」
「俺が良いって言ってんだから良いだろ」
「せ、せめて長谷山さんじゃ、ダメですか?」

しばらく無言の押し問答を繰り広げたけれど、結論としては“章義さん”で落ち着くことになった。
店長はどうにも強引でいけない。



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