先生、恋ってなんですか?
本当は心に根付いているその気持ちに、名前があるのなら、それが自分の答えなのかもしれない、けど。
先生の言葉ひとつで泣きたくなってしまう、その気持ちが、答えだったとしても。
私にとって、先生が“先生”であるように、先生にとって私は懐かしい“生徒”の一人でしょう。
私がそれを伝えたら、この関係は壊れてしまうのかな。
それなら私、絶対に言えないや。
この気持ちがなんなのか、恋がなんなのか、わからないままで良い。
だって先生と過ごすこの時間は居心地がいい。
けれど、歩き出さなきゃね。
先生だってイイ歳なんだし、いつか、なんて未来じゃなく、すぐそこの未来に彼女や、その先にある家族が待ってるはず。
その時の自分に、先生がいなくなってしまった自分に。
夢だけをひたすら追いかけることができるのかな?って思ったら、笑えちゃうくらい、まっすぐに追いかけられないんだろうなって思ってしまった。
大切なはずの夢が、ただの意地になってしまって、胸を張って両親に会うことすらできなくなってしまうんだろう。
ぐ、と感情を飲み込んで、明るくおどける。
それが、今の私にできることだ。
この時間を閉じ込める、私のできることだ。
「行ってみることにした、街コン。恋を見つけにいくよ!だけど先生、問題は服だよ。かわいい服なんて持ってないよ」
「お前バカだろう」
あきれた声で私をなじるけれど、私はそれが嫌じゃない。
「お前次の休みいつだよ」
「えー、1週間後?」
先生は、ふ、とため息を吐いて私にデコピンをくらわす。
「そこ空けとけ」
ぶっきらぼうに言って、先生は帰っていった。
ねぇ、先生。
人を好きになるってことが、こんなにも怖いことだなんてね。
でもきっと、恋も夢と同じ。
叶えることは難しいけれど、前を向かなければ、歩き出さなきゃ、進めない。