先生、恋ってなんですか?
「先生ごめんね、長閑な昼下がりにこんなことに付き合わせて」
「んなこたまぁ気にすんな。とりあえず飯でも食わねぇか?」
「そうだね」
「じゃ、次で降りようぜ。俺久々に中華街行きたい」
「あぁ、うん。中華街……て、行ったことないなぁ」
「あ?そうなのか。じゃ、店とか入らずに軽く済ませて買い物終わったらちゃんと飯にするか」
「うん」
何だかんだ強引ではあるけれど、先生はちゃんと私に合わせてくれる。さすが先生だ。
中華街を散策して、あそこが美味しいとかここが穴場だ、とかオススメを教えてくれる。
こないだの店長と出掛けたときも思ったけれど、私はやっぱり、外食事情に疎いらしい。
5年以上この街に住んでいるのに、どこが美味しいとかさっぱりだ。
どこまで自分の世界が狭いのかを思い知る。
料理に携わろうとしている人間としては、ちょっと反省だな。
中華街はもちろん、ご飯屋さんだけじゃなくて、雑貨屋さんやお土産屋さんなんかも充実していて、あっちにこっちに目を奪われてしまう。
その度先生に、おい、と首根っこ捕まれて正しい目的を問われ、ごめんなさい、を繰り返した。
結局、蒸かしたての豚まんや焼き小籠包とかの、定番と思われる飲茶を食べて、そのまま歩いてショッピングモールに向かった。
「なんかさぁ、地方都市だって言うけど、ちゃんと都会だよねぇ」
「そりゃお前、比べる先が悪いだろ」
「……先生に言われるとなんかムカつくね」
「そりゃすまん」
「まぁ事実だけどー」
自分の故郷は田舎だと思う。
ていうか、紛れもなく、田舎だ。
でも自分以外の人にそれを言われるのは、なんか、悔しい。
事実だけに言い返せないのが余計に。
「まぁ、俺は好きだったけどな、あそこ」
先生のこういうところ、ずるいと思う。