先生、恋ってなんですか?

あ、あれ可愛い。
いや、でも一人暮らしにメモスタンドは必要ないか。
あの一輪挿し良いな。
でも……

「お前は、服を選ぶ気があるのか?」

背後から感じる先生の視線。
見なくてもわかる。
じとーーってした目で見ているんだろう。
ぐうの音も言えない私は素直に謝る他ない。

「スミマセン」
「分かりゃいい」

手にしていた写真スタンドをそっと戻して、雑貨屋さんを後にする。
うぅ、後ろ髪引かれる。

たどり着いたのは、衣服のみを取り扱うわけではない、大型ショッピングセンターで、そこかしこに誘惑が待ち受けていた。
何を隠そう、無類の雑貨好きの私。
服は着やすければ良いって思うタイプだけれど、雑貨やインテリアには少なからずのこだわりがある。
働きだしてからは街中に出て買い物をすること自体が減ってしまっていたので、たまにこうやって街中に出てくると、どうにも色々と目移りしてしまう。
けど、本来の目的を忘れてしまっては意味がない。
先生からの無言の圧力を受けて、そそくさと洋服屋さんに入ってみた。
チラチラと覗いてみては、気になった洋服を手にとってあてがってみる。
良い感じじゃない?なんて、振り返って先生を見るとあっさりと却下される。
なにも無言で首を横に降ることはないと思う。
けっこう傷つくんですけど。
そんなことを何度も繰り返す。


「もぉ、先生の基準ってなんなの?」
「……いやお前。部屋着を選んでるんじゃないんだから」
「えー?十分外着にならない?」
「まぁ、そりゃお前が良いなら……最終的に金出すのはお前だし?」
「じゃあ良いじゃん!」
「良いけど。その服は今着てるのとどう違うんだ?」
「……っ、え、と。……色?」
「だから、却下っつってんだろ」

もっともすぎてなにも言い返せないのが悔しい。

「じゃあもう、先生が選んでよ!」

きぃっ!となって、思わず言えば、先生は無言で掛けてある服を物色。
え、マジ?

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