先生、恋ってなんですか?

「ほれ」

先生がチキン南蛮を一切れよけてくれる。

「あり、がとう」
「たまにしか外食もしないんだろ?ツレが居るときくらいいろんなもん食わせてもらえよ」
「お見通し?」
「透けて見える」
「先生ひどー!……あ、じゃあ、はい」

と、私がスプーンを差し出すと一瞬先生が固まった。
なんだ?虫でも付いてた?なんて、思って見たけれど。
これってよくよく見れば『はい、あーん(はぁと)』ってヤツじゃないか!
それは恥ずかしい。
おおいに恥ずかしいぞ!と、スプーンをプレートに戻して、それごと渡そうとしたところ。
ガッ!と手を握られて、そのままスプーンは先生の口のなか。
周りの人たちはみんな自分の世界、とはいっても。
大分恥ずかしい。

「先生って、意地悪だよね」
「なんとでも言え」

先生からの嫌がらせを嘆いても、相手に届く気配はない。
今度どうにかしてぎゃふんと言わせてみたいものだ。

食事も終わって、さてそろそろ出るかな?と思いきや。
先生は一向に動く気配がない。

「デザートは?要らねぇの?」
「……先生、時間いいの?」
「いいよ。今日は雑務終わらせてきてるし。他の先生方も先に行ってくれてるしな。授業に間に合えば。で?お前はいらねぇの?」
「何か頼むの?」
「俺ティラミス」
「最初から食べる気だったでしょう」
「当然だろ。ここはデザート旨いんだ」
「なんでそんなこと知ってるのさ?乙女か!」
「なんだって良いだろう。で、お前は?」
「……カタラーナ」

実は、メニューを見ていたときから気になっていたのだ。
そんなことすら透けて見えてたのか?なんて思うと……
いや、それはない。
自分が食べたかっただけだって。
だって先生、案外甘いもの好きなんだもん。


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