先生、恋ってなんですか?
美味しくデザートまで食べたところで、ようやく先生は動き出す。
金額は、と伝票に手を伸ばすより先に、それを先生がさらっていく。
「ちょ、先生!」
「ここは俺に付き合ってもらったんだから、黙って奢られろ?」
「だってそもそも私に付き合ってくれたんだからむしろ私が払う!」
「デザートまで無理矢理食わせといて女に払ってもらうの?イイ歳した、俺が?」
「あ、ぅ、でも!それとこれとは!」
「頑固だな、お前」
「だって!」
レジまでの道中、押し問答。
とはいえレジ前でずっとこれをやられては店員さんもたまったもんじゃない。
他人事ではなく、十分知っている、わけで。
「……じゃ、端数だけでも良いから。払わせて」
「仕方がないな」
結局こうやって、押しきられてしまうのだ。
これは年の功というやつなのか。
「ご馳走さまです」
お店を出て、歩き出す。
辺りは夕焼けに染まって、茜色。
「気にすんな、といってもお前は気にするんだろうなぁ。ま、いつも飯作ってもらってるお礼だとでも思ってろ」
「それはいつもお金もらってるし……」
「ほんとお前、男前だよなぁ」
それは暗に女らしくないと言われているようで地味にヘコむ。
おかしいな、前は、それでも笑い飛ばしていたはずなのに。