先生、恋ってなんですか?
いつの間にかアパートまで戻ってきていた。
「今日は本当にありがとう」
「もう何度目だよ」
そう言って先生は苦笑した。
「何度でも言うって。素直なのは良いところだと思ってる」
「……そうだな。ま、せいぜい楽しんでこい」
「そ、するよ。若者の空気吸ってくる」
「お前、じじくさいな」
「じじくさいとは何事さ!せめてばばくさいでしょう」
「ばばくさいなら良いのかよ」
「良くはないけど!」
「まぁ、でも。……ちゃんと、納得してこい。あとこれ、やる」
ずい、と差し出されたので思わず受け取った。
それはさっきまで先生が手にしていたもので、今日先生が買っていたもの。
え?まさか、はじめから私にくれようとして買ったの?
混乱していると、じゃあな、と先生は去っていく。
「あ、ありがとう!」
その背中に、お礼の言葉を言うしかできない。
ご飯までおごってもらった上にプレゼントだなんて。
仕方がないな、今度先生ガ来たときは、好きなものばかりを食卓に並べるしかない。
ふぅ、と息を吐いて部屋に戻る。
先生から受け取ったものを、がさがさと袋から出す。
そこには、雑貨屋さんで私がずっと見ていた写真立て。
なんだかわからないけど、涙がこぼれた。