先生、恋ってなんですか?
そういえば先生も夢なんて無いって言ってたっけ。
でも、この人たちとの決定的な違いがあるよね。
だって、先生は人の夢をバカにしたりなんかしない。
応援してくれる。
目の前のこの人は、薄っぺらな私の表面の何を見て、連絡先を交換しよう、なんて言うのかな。
「きっと、あなたと連絡先を交換しても、私にはあなたの望むものはあげられません」
ハッキリと伝えると、その人は頬を紅潮させて私に詰め寄ろうとする。
「女をビビらせるのは感心せんな」
ちょっとヤバイか?なんて思っていると、ぬっと、私とその人の間に割って入ってきた大きな背中。
見上げると、なんだ、この人……すごく大きい。
今にも掴みかかろうとしていたその人の手を、大きな人が捉えている。
ん?助けられた?
「チッ。ここをなんだと思ってるんだ。寂しそうにしてたから相手してやったのに」
大きな背中の向こうからぶつぶつと文句が聞こえる。
いや、まぁ。“好い人”探しをしに来たわけだけど、あなたは私の“好い人”じゃなかったみたいで、なんて言ったら火に油だろうか。
なんて不届きなことを考えている間に「そんな女、こっちから願い下げだ」と、聞こえたので、どうやら去っていったらしい。
くるりと反転して私を見下ろす大きな人が呆れ顔で私を見てる。
「ありがとうございます」
助けてもらったからには、一応お礼を伝えてみる。
「あんたも。もうちょっとうまく立ち回るか言い方を考えろ」
わーぉ。バッサリ。
それはすみませんでした、という言葉を言うより早く、大きな人も私の前から居なくなった。
どこからともなくその人のツレっぽい男の子が現れて、一緒に料理を取っている。
片や仏頂面、片やくるくる変わる表情。
なんか……凸凹したふたり組だなぁ。
先生はどっちかというとあの大きな人に似てるかも。
あそこまで仏頂面ではないけれど、やっぱり表情は固いし。
口も悪いし、強引。
でも優しい。
「……私も取りに行こ」
空になってしまっていたお皿を持って立ち上がった。