恋はまるで、粉雪のようで。
信じられない言葉
結局、待ち合わせ時間の15分前には着いてしまった。


年下男に会ったら、言わなきゃいけないセリフを頭の中で繰り返す。


『昨日は、セーターを汚してしまって申し訳ありませんでした。


クリーニング代です(封筒を渡す)』



その時、目の前がふっと暗くなった。


「ひなたさん、早いね」


「・・・こんばんは」


年下男は、今時の男子が好む細身のスーツに、ネイビーのピーコート、一目見てわかる高そうなカシミアのマフラー、茶系の靴にトートバッグを身につけて現れた。


やっぱり年下だな、ふたりで歩いていたら、年増女が年下男を連れ回してるみたいに見えちゃうじゃん。



そうだ、さっきのセリフ、言わなきゃ。


「あっ、あの、昨日は・・・」


「ひなたさん、行くよ」


「えっ?」


「連れていきたいところがあるって言ったじゃん。


ひなたさんもきっと、気に入ると思うんだよね」


そう言うと、年下男は駅に向かって歩き出した。




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