恋はまるで、粉雪のようで。
5つ先の、私が降りたことない駅を出ると、裏通りへ入っていく。


私の少し先を歩く年下男の背中を見ながら、このままついていっていいんだろうか、と不安になった。


もしかして、これから連れていかれる場所は、なんか怪しいところで、うまいこと言いくるめられてお金をまきあげられたりするんじゃないだろうか。


大学で同じサークルに入っていただけで、信用していいんだろうか。


逃げるなら今だ、まだ間に合う。


Uターンしようとした瞬間、逃げるのを見透かしたように、年下男はくるっと振り返って、


「着いたよ、ここ」


指差した看板には『ブックカフェ オリーブ』と書いてあった。


「ブックカフェ?」


「そう、ひなたさん本が好きだろうから、いいかなと思って」


とりあえず、お金をまきあげられそうにはないけど、まだ油断しちゃいけないと思いつつ、行ったことのない『ブックカフェ』という響きに負けて、年下男のあとに続いて店に入った。



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