恋はまるで、粉雪のようで。
店内は1階と2階に分かれていて、1階はおしゃべりもしたいグループ向け、2階は一人で静かに読みたい人向けと案内看板に書かれていた。


1階のテーブル席に案内されて、ふたりともコーヒーを頼んだ。


10個ほどあるテーブルのまわりをぐるりと取り囲むように本棚が設置されていて、作家別にあいうえお順でならんでいるらしい。


本に囲まれてお茶するなんて、なんか夢みたい。



「どう、ひなたさん気に入った?」


「はい、図書館とカフェがくっついてるみたい」


「本も1冊借りられるんだよ」


「そうなんですね」


お待たせしました、と店員さんがコーヒーを運んできてくれた。


「ねえひなたさん、その敬語やめない?」


「えっ、でも・・・」


「待ち合わせして、ふたりで会ってるんだし、もういいじゃん」


年下男は、さわやかな笑顔で言うけど。


私は、謝りに来たんだし。


「あの、昨日はセーターを汚してしまって、申し訳ありませんでした。


これ、クリーニング代です」


封筒を差し出して、ペコリと頭を下げた。


私の様子を黙って見ていた年下男は、


「クリーニング代なんていらないよ、今日来てくれただけでいいから」


封筒を返してきた。






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