恋はまるで、粉雪のようで。
ふたりでいるのに、本を読むのも変なので、本は閉じたままコーヒーを飲んでいた。



「俺ね、ひなたさんにずっと会いたかったんだ」


「えっ?」


「夏ぐらいから、サークル来なくなっちゃったじゃん。


ひなたさんに会いに、女子大へ潜入するわけにもいかないし。


俺、ひなたさんがつらい想いしていなくなっちゃったの、知ってたから」



何を知ってるっていうんだろう。


祐子と美佐は、修くんと私が別れたこと知ってるけど、誰にも言わないでって頼んだのに。


もしかして、ふたりはサークルに残ってたから、しゃべっちゃってサークル中の噂になってたとか?


きっとそうだ、それしか考えられない。



「何を知ってるっていうの?


噂話するなら、私がいないところでしてよ!」


昨日から、ふさがっていた傷口をえぐられるようなことばっかり。


忘れてはいないけど、思い出すことはなくなってきたのに。


悔しくて悲しくて、涙が一筋流れた。


大人なのに、人前で涙を流すなんて最悪だ。


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