恋はまるで、粉雪のようで。
「そう、あの喫茶店にいたんだ。


で、同情してくれて、かわいそうに思ってくれて、たまたまカフェで見かけて、ヒマつぶしにからかってみたくなったってこと?」


「そんなわけないだろ」


「じゃあ、なんなの?」


「こんなかわいい人が振られちゃうなんてなんでだろう、もったいないって思ったよ」


「嘘ばっかり」


「ほんとだよ、その場ですぐなぐさめたかったけど、バイト中だったし、次にサークルで会った時に話を聞こうと思ったら、ひなたさん二度と来なかったから」


当たり前だ。


別れた相手がいる場所にノコノコ行く人なんているわけない。


「俺なりにいろいろ探したり、聞いたりしたんだけどさ、橋本さんも河上さんも教えてくれなくて」


祐子も美佐も、約束守ってくれたんだ。


「だから、昨日みかけた時は、奇跡かと思った。


この10年、本屋や図書館に行ってみたり、営業でまわる会社にいないか何気なくチェックしたりしてたけど、会えなかったから」


「10年も探すなんて、あり得ないよ」


「俺もこの10年、誰とも付き合わなかったわけじゃないけど、ずっとひなたさんのことを気にかけてた。


だから、もうひなたさんのことしか考えられないんだ。


俺の彼女になってくれる?」





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